内容説明
経営学においても、自然科学と同様、因果関係を把握することを目指している。しかし、必要十分なデータが取れないことが多いため、少ない事例に基にした定性分析を用いることが多く、活用に制約がある。
しかし、十数年前に質的比較分析(Qualitative Comparative Analysis:QCA)が開発され、欧米ではすでに社会科学の研究にあたり広く活用されるようになっている。
QCAでは、少数の事例からでも因果関係の把握が可能で、分析手続きも一定に定まっており、原因条件や結果がファジーであっても活用できるため、特に経営分野では、その有効性は高い。
本書は、高い評価を受け、ロングセラーとなっている『リサーチ・デザイン』の著者が、QCAの基本的原理や分析手順、さらにそれをリサーチ・プロセスにどのように組み込むのかをまとめている。
著者は経営学者で、その事例を多く用いて説明しているが、他分野の研究者・学生にも理解しやすいものを選んでおり、また、用いられる数学もほとんど高校初年度で習う水準なので、事前知識なしで理解できる。 日本では、まだまだQCAの解説書が少ないことから、経営学のみならず、広く社会科学の研究に資する基本書となるだろう。
【佐藤郁哉 一橋大学大学院商学研究科教授から推薦コメントをいただきました!】
定性的研究と定量的研究の架け橋となるQCA(Qualitative Comparative Analysis: 質的比較分析)に関する画期的な解説書である。
QCAという分析法の存在それ自体については、日本でも比較的早くから知られていた。しかし、実際の分析事例となるときわめて限られたものであった。特に、経営研究の場合には、その適用例は皆無に近かった。本書は、1980年代末に米国で開発されて以来、社会学や政治学をはじめ経済学、経営学などさまざまな分野で採用されてきたQCAの基本的な発想と適用法のポイントが的確かつ簡潔に紹介している。
経営研究における事例研究の中には、事後解釈ないし後知恵的なサクセス・ストーリー的解説にとどまる例が少なくない。本書で解説されているQCAの発想と技法は、そのような「規律に欠ける」事例分析の限界を明らかにし、また、ビジネス・ケーススタディに対して確かな論理性を与えていく上で非常に大きな意味を持っていると思われる。
目次
第2章 事例を理論概念でどう捉えるか
第3章 因果関係をどう捉えるか
第4章 因果関係をデータからどう推論するか
第5章 データは推論をどう支持しているか
第6章 真理表の解は何を意味するのか
第7章 リサーチ・プロセスへQCAをどう組み込むか
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